いきるかたち。

2014.07.23 14:00|日記
ワタシの母の実兄(つまりワタシの伯父)が、ガンになっていた。

去年末ごろ、 ちょっとした体調不良から病院へゆき、
検査した結果、全身相当な部位に、ガンが見つかったのだという。

ただ、不思議なことに、健康にさほど不都合はないようで、
いとこたちに言わせると「本人はいたって普通」と。
そして「あいかわらず、好き勝手。飄々としてる(苦笑)」と。



0714 (3)



伯父は、家族にいると面倒臭いだろうなぁ(苦笑)
そう思うようなひとだ。

風来坊で、気まぐれ。
豪快で、無頼。
遊び好きで、立派な『のむ。うつ。かう』
ただ『かう』だけは、正しくない。
伯父の場合、勝手に”モテ”ていた。
ずいぶんと無口なほうだのに、
なぜかいつも、いつもいつも、美しいおんなのひとが見え隠れする。

伯母は、生涯、伯父のそんなところにヤキモキしていた。
でも、ヤキモキしながらも、伯父に夢中だった。
「おとうさんのこと、ちゃんと見てあげててね」
伯母は65歳のときに、突然、ガンで亡くなった。

「最期の最後まで、母は父のことを気にしてた。
あんな父。いったいどこがそんなにいいんだろう。
母は苦労ばっかりかけられてたのに」

いとこたちは、長男・長女・次女の3きょうだい。
とてもとても仲が良くて、うらやましいほど、きょうだいが深くつながっている。
そして、3人がいつも、くちを揃えて言うのは、
こんなふうに、伯父の悪口ばかり。

それでも。
それでも、ワタシは知っている。
3人とも、そんなだらしのない、気まぐれな伯父のことが大好きなことを。
伯父の自分勝手に泣き、悔しがり、怒り、呆れ果てても、
伯父のことを、思っている。
それらが、たとえぜんぶ、自分たち側だけの
一方通行の恋愛のような思いであっても。



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伯父は、無類のイキモノ・バカで、
捨て猫、捨て犬、迷い猫、迷い犬を引き取ること数知れず。
ひよこ、カメ、オウム、金魚らも、伯父の家にはいた。
一番驚いたのは〈迷い子ヤギ〉を拾って戻って来たこと。

ヤボ用でとある山道を、車で走っていたとき、1匹の子ヤギがいた。
このまま道路に居続けたら、危ない。

「子ヤギを車に乗せて、一番近くの村にいたおっちゃんに見せたら、
親からはぐれたんやろなぁって。
もうどうしようもでけんなぁって。
そういうから」

捨て・迷いイキモノを、こうして、伯父はくまなく、引き取って戻る。
それらを解決してゆくのは、すべて、伯母と家族たちなのだった。

ちなみに、その子ヤギ。
いとこの奔走の甲斐あって、とある幼稚園が引き取ってくれて、
園児たちと一緒に暮らすことになったと聞いた。
伯父は、なんにもしていない(苦笑)



0714 (5)



わが母も、伯父にはまさに”愛憎”という様子を、持つ。

たったひとりのきょうだいに、母は「ずっと振り回されて来た」という。
若かりしころ、母の勤め先のお給料日になると、
母の下宿先へ、伯父がふらりと現れ、
「お金貸して」と言っては「お給料のほとんどを持ってったの。
ほとんど、毎月よ」

言葉で聞くと、本当にふてえ野郎だと思う。
だけれども、そこがまた伯父の不思議なところ。
”憎んでも憎み切れない”という感じが、
被害者の(苦笑)母にも、それを聞くたび
稲妻のような怒りを伯父にぶつける祖母にも、あった。
親戚が集まっても「○○ちゃんらしいわぃ」で、みんな笑って済ます。

そんな伯父のことを、母は、万感の思いを込めた口調でこう言った。

「どうして、あのひとは、あんなに自分勝手で生きられたんだろうって。
そう思うと、悔しくて悔しくて悔しくて。
でも、そうパパ(ワタシの父)に愚痴ったら、パパ。
ママは悔しいんと違う。
ママは、ほんまはうらやましかったんや。
そう言われてね。
ハッとした」
そう言いながら、母は大粒の涙を流して、泣いた。



0714 (6)



伯父は、陸上競技選手で名前を鳴らし(数年前まで県大会記録ホルダーだった!)
頭が良く、当時母の郷ではたいそうめずらしく、
東京六大学のひとつへ進学をし”スター”だったという。
背が高く、細身で、いまだに体つきは落ちぶれていない。

頑なでどうにもならない、かつての日本にいた、
頑固親父の典型・ド級の一家の長だった、祖父にも、
戦火を何度もくぐりぬけ、度胸と正義がたましいの全部、のような、
火の玉みたいに鉄火な女だった祖母にも、
あらん限りの愛情を受けていた、伯父。
そんな兄を、好きでもあり、地上最大に大嫌いでもあった、母。

運命的な出会いで恋に落ち、その一瞬の一目惚れを
一生涯保ち続けて、伯父を愛した、伯母。
その母親を不憫に思いつつ、呆れつつ、怒りつつ、支えて来た子どもたち。

それらすべてのうえに、伯父のいきるかたちがあった。

治療はし始めたらしい。
そして幸い、伯父は本当に「ふつう」に暮らしている。

「治療開始したばっかりなのに、入院してても、
別になんともないし、することもないから、居ることもないって、
ワケ分からんこと言い出して、結局入院した翌日、戻って来たの。
お医者様も、まぁ週末だしねーってことで許してくれて(苦笑)
また週明けから、ちょっと入院」と、いとこ長女。

「ほんとに、ずっとこんなふうに、自分勝手にいきるんだろうな、父は」

いとこ長女の呆れにも、もはや磨きがかかり、輝きを放つ(笑)

伯父は、飼っている猫が気になるから、と
ひとまず最初には言ったらしい。
(伯父は、特にイキモノの中でも猫好きで、それはそれはもぅ、すさまじいまでの愛。
なお、その愛は完璧に伯父側の片思い:爆笑)

「でも、べーちゃん(猫の名前)撫でたら、
すぐさま競輪に行ってた(苦笑)」

ワタシはそんな伯父のことが、好きだ。



0714 (1)



いきものの、いきるかたちは、それぞれ。
迷いながら、迷わずにゆく。





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