すえながく、幸福あれ。

2016.08.24 21:34|日記

「胸に蓮の花を咲かせて。
30歳くらいまでに、きっとこの世から去るんだ」
なんて。

ボリス・ヴィアンの『日々の泡』にほんの少し酔い、
無意味な妄想に遊んでいた、若いころ。
それはもう、本当に。
今から思えば、本当に、若いころ、だ。

そのころからの、仲良しの友を迎えに、ゆく。
光がまぶしくて、目がうまく開けられないほどの、晴天の午後。




0824tt (1)



大学生の18歳のときから、四十路をぴゅんと越えるまで。
その友達は、京都に暮らした。
数年前から、転勤で、福島に住んでいる。
(友達のおかげで、福島へのいろんな思いは、
今もワタシの中であり続けている。得がたい事実)

実家は他府県。
でも、友達が京都に来ることを、
ワタシも友達自身も「京都に帰る」とか「京都へ戻る」とかいう。
彼女の郷と京都はもはや同意義になってる。


1年半振りに会う友達は、にゅるっと京都駅の待ち合わせ場所に登場し、
ワタシもそれをにゅるっと引き受ける。
どもどもども。元気だった。うん。うん。なんとかね。
顔を合わせてにやにやした瞬間から、
時間はいつのころにでも、戻ることが出来る。
そんな、間がら。
そんな、気楽さが、心地いい。


”お帰り・友達会”みたいな名目で、
その日の都合が合う数人で、集まった。
みんなみんな<若いころ>からの、友達。

澁澤龍彦に心酔し。
ミハイル・バフチンに憧れ。
レイモン・クノーに肩入れして。
スティーブ・ライヒに惹きこまれ。
ミース・ファン・デル・ローエに傾倒を。



『 僕らの短い永遠を知っていた
  僕らの愛
  僕らの愛は知っていた
  街場レヴェルののっぺりした壁を
  
  僕らの愛は知っていた
  平坦な戦場を
  
  落ち葉を見るがいい
  涸れた噴水を
  めぐること

  平坦な戦場で
  僕らが生き延びることを
           
     by ウィリアム・ギブスン (黒丸尚氏: 訳) 』 ※抜粋



すごく長い時間が流れてる。
でも、若いあのころと、今のワタシたちは、同じ。
ずっと、ひとつに、繋がってる。



0824tt (3)



京都駅にある伊勢丹で、お菓子をいくつか買う。
お茶会の場を提供してくれた友達の家に向かう。
穏やかな時間の流れの幕開け。
同時にそれが、
終わらなければいいのに、と思う、時間の幕開け。

<話が尽きない>なんていう、陳腐な言葉が、一番しっくり来る。
話が尽きない。
その場にいる、誰の話でも、聞く。
楽しく笑う。
ものすごく笑う。
何かの拍子の罵詈雑言まで、ものすごく、笑う。

邪悪なものとか、悪意に満ちたものとか、何もない。
反面、高尚なものも、崇高なものも、何もない。
善良なことから辛らつなことまで、どんどん言い合う。
窺わず、ひるまず、探らず、
思うことを言葉に出来る関係は、本当に、素敵だと思う。

話を、枯れることなく、尽きないだけ話しているのに、
たった今話したことを、たちまちに、忘れてゆく。
だから、いいんだと思う。
忘れられることは、ある意味、透明なこと。
いいことも悪いことも、それがいい。

<若いころ>から、今になるまで。
それぞれが、いろんな映画を観たり、音楽に酔いしれたり。
読書を貪ったり、美味しい食事に明け暮れたり。
髪の毛を染めたり、丸坊主にしたり。
恋をしたり。
恋を失ったり。

ファッションの好みがどんどん変わるように、
それぞれの暮らしも、どんどん変わっていった。
環境も何もかも、どんどん。
だけれど、それでも、変わっていないものもあって。
誰がどう変動しようと、変わっていないものを、感じる。
どうあっても、その友達を、指し示す。
だから、今も、仲良し。



0824tt (4)



ただ今は<若いころ>では、もうない。

両親は少しずつ老いを引き受けているし、
自分自身も、いろんな変化を感じてる。
年の近い知人でも、寂しいことに、
川の向こうへ早々と渡っていってしまったひともいたりする。

子どものいる友は、その子が赤ちゃんから成長をして、
すくすくと育った証として、ほんのり反抗期を体現していて。
甘酸っぱい気持ちになる。
あんなに小さな赤ちゃんだったのに、なんて。
不思議な気持ちになる。
時間の過ぎることを、わかる。
過ぎたことを、わかる。

友達が福島へ戻るとき、
ひとりの友人が
「また戻ったときは、連絡して。
また会いましょう」と言ったとき、
そういうのは泣けてくるからよしてと言った。

何も変わらない中にも、それぞれが、時間を感じている。




0824tt (5)



幸福だなと思うとき、この友達たちがいる。

ワタシは、ひとよりたぶん、
ずいぶんと、友達の少ない人生を送っているけれど、
とてもとても幸福だと知ってる。
友達たちのことを思うとき、
ワタシはいつだって、やさしいひとになることが、出来る。
それが、一番の、幸福だ。
底意地の悪さも、ひねくれもののすねた心も、遠くへ追いやってくれる。


福島へ、友達は、300キロの時速で、去っていった。
またいつか、300キロの時速で、戻ってくるときまで。
さよなら。
さよなら。
元気でいてね。
ワタシも、元気でいられるように。
穏やかなワタシで、いられるように。
どうかみんな、
すえながく、幸福で。

今日という時間を、ありがとう☆



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京都のすみっこから、オットとマルプー・ちまとのんびり暮らす日常を気ままに綴ります。

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